結局のところ(2023) - masakado/nishihata ページ42
( 正門良規side )
西畑「デビュー本当におめでとう」
正門「ありがとうな」
井ノ原くんと大倉くんからデビューという事実を告げられて、
まだ限られた人達しか知らないながらも何度もかけてもらった言葉を受け取る。
大吾は自分のことのように泣きそうな顔をして、おめでとうともう一度繰り返した。
俺もそれにありがとうと繰り返す。
西畑「正門」
正門「なによ」
魔法の飲み物のせいか、少し顔の赤い大吾と目が合う。
少し冷えてしまった食事に箸を伸ばして摘まむと口に放り込んだ。
西畑「このまま、しろに気持ち伝えへんの?」
正門「……急やなあ」
大吾から視線を逸らして今度はグラスに口をつける。
視界に入った自分の指に、いつかの誕生日にりりから貰った指輪がついていた。
西畑「急、でもないやろ。西畑はずっと思っとったし」
正門「Aぇになった時に忘れなやなぁ、って決めたんやけどな」
西畑「それで忘れられたん?」
正門「自分でもよーわからんのよ。間違いなく大切な子やけど」
同じグループになると決まった時、
彼女が今度こそ掴んだ居場所をもう失くさせてはいけないと思った。
それに、このグループがきっとラストチャンスだ、と思ったのは彼女や、俺だけじゃないはずだ。
自分の中にある彼女への女の子として好きだという気持ち以上に
彼女が大切だという気持ちが自分の中にある恋という感情を殺させる。
それでも、隣におればそれでいいと言い聞かせてきた。
西畑「拗らせてるなー」
正門「拗らせてるんかなあー」
酔いがまわっているのか、少し回らない呂律で言葉を繰り返す。
りりの声が頭の中で思い出された。
良規、って今ではあんまり呼ばれない呼び名で俺を呼ぶ彼女の声。
西畑「しろが正門以外と幸せになってもええ?」
正門「……嫌やな」
西畑「それが好きちゃうかったら怖いわ」
大吾が笑うから、つられたように笑った。
正門「しろが関西に戻ってきた時、俺が守るって思ったんよ。必死にしろが作ってきた居場所を、俺が壊すことになったら俺生きていけへんよ。それにその場所は俺にとっても大切な場所やし」
西畑「壊すかどーかはわからんやろ」
正門「そうやけど」
西畑「うじうじしてんの正門らしくないけど、しろのことになるとわりといつもそうよなー」
正門「うじうじって」
なんでもお見通しみたいな顔をした大吾の顔を見ながら、無性に彼女に会いたいと思っていた。
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作者名:くー | 作成日時:2023年11月15日 12時